家族信託と後見人制度のどちらにすべき?特徴を比較解説
2025/02/06
財産の処分や管理、契約行為などは本人が自己責任で行うのが原則です。しかし契約によってその権限を他人に譲渡することは可能ですし、判断力が下がったことを理由にサポートをしてもらうことも可能です。
具体的には、「家族信託」を始めること、あるいは「後見人制度」を利用して後見人をつけることによって対処ができます。それぞれ似た部分も多いですが、目的やできることに違いがありますので手続を始める前に両方の仕組みを理解しておくことが望ましいです。
家族信託の特徴
家族信託は、家族や親族間で信託を行うことをいいます。
銀行などが信託サービスを提供していることもありますが、銀行などの事業者に財産を託す商事信託とは異なり、身内に財産を託して始める民事信託を特に「家族信託」と呼んでいるのです。
この家族信託には次の特徴があります。
・資産運用の自由度が高い
・財産承継の指定ができる
・開始時期や継続期間を定められる
この3つの特徴を説明していきます。
資産運用の自由度が高い
家族信託では財産を守るための管理を行うだけでなく、購入や売却などの行為により資産を増やす、積極的な運用も行うことができます。
当事者間での契約で定めた行為に限られますが、契約で定めていればさまざまな行為を受託者に期待することができます。
財産承継の指定ができる
財産の取り扱いに対する自由度が高く、財産の承継に関しても細かく指定することができます。
例えば「ある不動産Xから生じる利益は、家族信託開始当初は委託者兼受益者であるAに、Aが亡くなった後はBに、Bが亡くなった後はCに与える」などと定めることもできますし、遺言書の代わりとして家族信託を活用することもできます。
しかも、遺言書だと一次的な相続に対してのみ効力を発揮するのに対して、家族信託に基づく財産承継であればその後の二次相続に対しても指定することができます。
開始時期や継続期間を定められる
家族信託は、①財産を預ける人(委託者)、②財産を管理運用する人(受託者)、③信託による利益を享受する人(受益者)の3者間で契約を交わして開始されます。
※①と③を兼ねることも可能。
そのため当事者間の合意さえあれば自由に決められる事項が多く、信託を始める時期であったり、逆に信託を終わる時期であったりしても定めることが可能です。
ただ、契約であるが故に全当事者には「契約を交わすことでどうなるのかが理解できる判断力」が求められます。すでに認知症が進行しており、家族信託のことを理解しないままサインをしてもその契約は無効です。
後見人制度の特徴
後見人制度は、判断能力が衰えた方のサポートを行う後見人をつけるための制度です。
サポートを受けることになる本人が事前に支援内容等の準備を進めておく「任意後見制度」と、判断能力が衰えてしまってから後見人を付ける「法定後見制度」の2つがあり、それぞれ必要な手続や後見人のできることにも差があります。
共通する特徴として次の2点が挙げられます。
・生活のサポートができる
・裁判所が監督する
また、法定後見制度に関しては「判断能力がなくなってからでも始められる」という特徴もあります。家族信託でできることと比較しながらそれぞれの特徴を以下で説明していきます。
生活のサポートができる
後見人制度でも、サポート対象となる被後見人の財産を守るための行為ができます。しかし自由に財産を処分したりすることはできず、あくまで被後見人の生活を支えるための支援として行うだけであって、できることにも限りがあります。
一方で、後見人制度は財産管理以外にも関与できるという強みも持っています。
「身上監護」を行い本人の生活を守ることが後見人制度の大きな目的ですので、例えば代理で介護サービスの申し込みをしたり、本人が意味を理解しないまま行った不動産売買を取り消したりすることもできます。
裁判所が監督する
後見人制度を活用することで、本人の権限を制限し、後見人に代理権を与えることもできます。後見人が適切に仕事をしてくれれば問題ありませんが、その立場を悪用することも不可能ではありません。
そこで後見人制度は、裁判所の監督下で運用する決まりになっています。
裁判所に対して仕事の結果を報告しないといけないなど、公的機関の関与を受けることとなりますので適正性をある程度確保することができるのです。
一方の家族信託は私人間の契約に基づく仕組みですので公的な機関が監督を行うことはありません。契約で別途監督を行う人物を設けることは可能ですが、基本的には受託者を信用して財産を任せることとなります。
判断能力がなくなってからでも始められる
後見人制度のうち法定後見制度に関しては、サポートをしたい方の判断能力が衰えてから・失ってからであっても始めることができます。
任意後見制度や家族信託は契約を交わすところから始まりますので、契約を有効に交わすことができるだけの判断能力が残っていないといけません。
しかし法定後見制度は、家族などが裁判所に申し立てて、医師による診断書や鑑定の結果を用いて後見人をつけることが可能です。
家族信託と後見人制度のどちらを選ぶべき?
家族信託と後見人制度のどちらを選択すべきか悩むこともあるかもしれません。
そんなときは、まず「現時点で当事者に十分な判断能力があるか」に着目してみましょう。契約締結をするのに必要な判断能力がないと思われるときは家族信託や任意後見は始められません。
※医師の判断も重要であるが、ポイントは契約を有効に締結できるかどうかであるため、その評価を行うには司法書士等の法律家を頼る必要がある。
次に「複雑な資産運用や承継を指定したいか」に着目します。投資のような高度な運用を求めるのであれば家族信託が向いていますし、財産承継についての指定は家族信託でなければできません。
また、「生活全般の支援が必要か」に着目しましょう。あるサービスへの申し込みなど生活に関わる支援を行いたい場合は後見人制度を活用する必要があります。
なおどちらか1つしか選択できないわけでもありませんので、併用することも視野に入れると良いです。後見人制度や家族信託に詳しい専門家の意見を聴くことも成功の秘訣です。
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