相続登記を司法書士に相談・依頼するメリット

遺産に土地や建物など不動産が含まれているときは、相続登記により名義変更を行います。不動産を取得した相続人自身が登記名義人となりますが、この手続に関しては国家資格を持つ司法書士に相談・依頼できます。

ご自身で対応すれば相談料や依頼費用の負担はなくなりますが、司法書士を利用することにも数多くのメリットがありますので、費用対効果を考慮してどうすべきか判断すると良いでしょう。ここではそのメリットについて紹介していきます。

 

登記の方法について自分で調べる必要がなくなる

司法書士は登記のプロであり、法律にも精通した専門家です。司法書士を利用すればご自身で登記のやり方について一から調べる必要はなくなり、効率的に相続手続を進められるようになります。

 

そもそも登記手続は重要な権利に関する情報を登記により公示するための手続です。慎重な判断が求められますし、関係する法令への適合性がチェックされることから、民法などの法律知識、測量などの技術的な知識についても持っておくことが望ましいです。しかしながらこれらの知識を相続開始後に学び始めるのは現実的ではなく、ご自身で申請するとなれば曖昧な知識のまま対応することになってしまいます。

 

司法書士を利用すれば、費用はかかるもののこうした不安を抱く必要もなくなります。

 

登記申請に必要な書類を集めてもらえる

仮に相続登記に関する十分な知識が備わっていたとしても、必要書類の準備には相当の時間がかかります。次に挙げるように、多数の書類を取得・作成しないといけないことは覚えておくと良いでしょう。

 

・登記申請書

・被相続人の戸籍謄本等

・相続人全員の印鑑登録証明書

・相続人全員の住民票

・遺産分割協議書（遺産分割協議で取得者が定まったとき）

・遺言書（遺言書が作成されているとき）

・不動産の固定資産評価証明書　など

 

司法書士に相続登記の手続を委任しておけば、これら書類集めに手間をかける必要はありません。平日の昼間に時間を確保することもなくなります。

 

登記申請でミスが起こりにくい

相続登記がきちんと処理できていない場合、いくつかの問題が起こります。

 

もっとも深刻なのは、不動産が第三者に取られてしまうかもしれないという問題です。登記ができていない、あるいは手続が遅れてしまうことによって「この不動産は自分のものだ」と主張するのが難しくなってしまいます。

 

また、2024年4月からは相続登記が法律上の義務となります。相続開始から3年以内に義務を履行しない場合、過料という行政上のペナルティを課される危険性があります。

 

しかし司法書士に任せることで不備などが起こる可能性は大きく下がり、所有権の主張、ペナルティの問題などに直面するリスクは小さくなります。

 

相続財産の調査や遺産分割のことも相談できる

相続登記は相続手続の一部といえます。相続登記以前には死亡届の提出が必要で、遺言書の確認、相続人の調査、相続財産の調査、遺産分割協議などを経てようやく「誰が不動産を取得するのか」が定まります。

 

相続登記の手続が上手くできるとしてもそれだけで十分ではなく、その他関連する手続も進めていかなくてはなりません。

 

相続登記については今後期限が設定されます。また、相続放棄・限定承認については相続開始から「3ヶ月以内」の期限が設けられています。さらに相続税の申告にも「10ヶ月以内」という期限があります。

 

税務は司法書士の専門領域ではありませんが、相続登記だけでなく、「誰が相続人になる？」「どうやって遺産分割すればいい？」といった相談にも対応してもらえて、期限にも間に合わせやすくなります。

 

司法書士費用と依頼できる範囲は要チェック

司法書士を利用するときにかかる費用は依頼先によって異なります。そのため正式に依頼を出す前に、料金体系をしっかりとチェックしておくべきです。思わぬ追加料金が発生してトラブルにならないよう、事前に気になることを質問し、説明を受けておきましょう。

 

また、司法書士は法律に強い専門家ですが、あらゆる法律問題を解決できるわけではありません。特に「家族間で揉めている」「これから紛争が起こる危険性が高い」といった場面だと司法書士だけで対応できなくなるおそれがあります。
依頼した司法書士が法務大臣から認定を受けていれば訴額140万円以下の事件に限り対応可能ですが、それ以上になると弁護士が必要です。

 

一方で、「相続に関して揉めていない」「相続財産に不動産が含まれている」といった場面であれば司法書士の利用がおすすめできます。