認知症対策として有効な手段とは?遺言・信託・後見について解説
2022/10/18
認知症になることで詐欺に引っかかりやすくなってしまいますし、自ら財産を散逸するような行為をしてしまうかもしれません。そこで家族や親族のためにも、本人の判断能力が衰える前に対策を講じておくことが望ましいです。
ここで認知症対策として有効な手段である、①遺言書の作成、②家族信託の利用、③後見制度の利用の3つについて解説していきますので、参考にしていただければと思います。
遺言書の作成について
遺言書とは、本人が亡くなる前に自らの意思を形に残したものです。
所定の作成方法に従い作成することで相続人らに一定の法的効果を及ばせることができるようになります。
遺言書の効果
遺言書を使えば遺産分割の方法などが指定できます。「誰に」「どの財産を」「どれほど与えるのか」といったことを細かく定めることができます。
遺言書を作成するからといってすべての財産につき細かい設定をしていく必要はありません。特に自分の意思を反映させたい財産についてのみ記載をすれば十分です。重度の認知症になってしまってからでは十分にその意思を伝えることができなくなるおそれがありますので、早いうちに遺言書を作成しておくことが望ましいです。
遺言書の作成に関する注意点
遺言書を使い、本人の指定した通りの遺産分割を行うことは可能です。しかしながら相続人全員の承諾があれば遺言書の従わない遺産分割も可能です。そのため遺言通りに実行されるとは限らない点、理解しておく必要があるでしょう。
また、遺言書の作成は法令で定められている形式に則って行わなければなりません。形式的な不備があると無効になるおそれがあります。署名や押印、日付の記載、封印といった一つひとつの作業を適式に進めていかなければなりません。
不備があっても、相続人らが意向を読み取ってその通りに遺産分割等をしてくれる可能性はあります。しかし1人でも遺言内容に不満がある相続人がいると遺言書は無効なものと扱われてしまうのです。
認知症が疑われる段階での遺言書作成について
すでに認知症の疑いがある場合、その時点で作成した遺言書はどのように扱われるのでしょうか。
原則としては、遺言書が有効になるには遺言者本人の意思能力が認められる場合です。そのため認知症により一切の意思能力がないと評価される状況だと、作成した遺言書は無効になる可能性が高くなります。
しかしながらケースバイケースで考えることが大切です。程度の問題でもありますし、遺言書の内容次第では有効に扱われる可能性もあります。
家族信託の利用について
家族信託とは信託契約の1つの在り方です。
そして信託契約とは、「委託者」が自らの財産管理を「受託者」に任せ、受託者は契約通りに管理・処分を実行、その恩恵を「受益者」が受けるという、3者からなる構造でできている契約のことです。
認知症を考慮して自らの財産を任せたいご本人が同契約における委託者となります。
委託者は、財産管理を任せられる、信頼できる家族等を受託者として設定することになります。形式上、財産は受託者に移転しますので、受託者は信用できる人物であることに加えて財産管理能力を有している人物でなくてはなりません。
受益者を委託者本人とすることもできますし、配偶者や子などに自由に設定することもできます。
家族信託の効果
家族信託を利用すれば、遺言書の作成では実現できない「孫の代にまで及ぶ財産承継の指定」など、その他高い自由度をもって財産管理を任せることができます。
一方的に意思を伝える遺言書とは異なり、契約締結にあたって当事者全員が参加して話し合うことで、より複雑な運用も実現しやすいと言えます。
家族信託に関する注意点
家族信託は財産管理に関する契約であって、療養監護についての行為まで受託者に任せられるわけではありません。そのため本人の生活を維持するための契約行為、入院に関する同意などは家族信託をもってしても対応できません。
また、家族信託は仕組みが複雑で、法律のプロのアドバイスなく適切に実行することが難しいです。信託に精通した方でなければ、トラブルを避けるためにも弁護士や司法書士などの専門家に相談することがおすすめされます。
さらに、家族信託では財産の所有権が受託者に移転するため、受託者が契約に反した勝手な処分をしてしまうリスクがあります。これを防ぐためには信託監督人を設ける必要があります。契約時点では信用の置ける人物であったとしても、後々何が起こるかわかりませんので、色んな状況に対応できるよう体制を整えておかなければなりません。
後見制度の利用について
後見制度とは、本人が判断能力を欠いたあるいは不十分になった場合に備えて、本人の代わりに様々な行為を行う後見人を置く制度のことです。
家族信託と異なり、受託者に財産を移転するといったことはなく、所有権は本人にあるまま後見人が代理で管理・処分を行うことになります。
任意後見と法定後見がある
後見制度には、任意後見と法定後見の2種があります。
任意後見とは、認知症などを想定して本人が契約により後見人を定めることを言います。本人が信頼できる人物を後見人として指定し、認知症などにより判断能力を欠いたことをきっかけに後見が開始します。
他方、法定後見とは家庭裁判所の審判を受けて後見が開始されることを言います。裁判所が本人の判断能力を判断して、“事理弁識能力を欠く”と判断されたなら「成年後見人」、“事理弁識能力が著しく不十分”と判断されたなら「保佐人」、“事理弁識能力が不十分”と判断されたなら「補助人」が選任されます。
法定後見は判断能力が低下した後に利用される制度ですので、認知症対策として利用するのであれば任意後見契約を締結することになるでしょう。
後見制度に関する注意点
後見人を置く場合、財産に関する管理・処分のみならず、身の回りの多様な行為に関してサポートを受けることが可能となります。その反面、家族信託ほど自由なルールを自分たちで設定することはできません。後見人の自由な判断で行動することもできません。
また、法定後見人に比べて任意後見人は権限の範囲が狭いです。本人がした契約につき取消しを行うことなどもできないとされています。
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