【コラム】相続人の中に連絡が取れない人がいる場合、相続手続きは進められる?
2026/09/14
こんにちは。司法書士法人あかりテラスです。
相続が始まったものの、相続人の一人と連絡が取れず手続きが止まってしまうことがあります。
「手紙を送っても返事がない」
「長年疎遠で連絡先が分からない」
「住民票上の住所に住んでいない」
「どこにいるのかも生きているのかも分からない」
このような場合でも、状況に応じた方法で相続手続きを進められる可能性があります。
ただし連絡が取れない人を除外し、残りの相続人だけで遺産の分け方を決めることはできません。
この記事では、連絡が取れない相続人の住所を調べる方法や、家庭裁判所を利用した手続きについて解説します。相続登記や預貯金の解約を進める際の注意点もあわせてご紹介します。
目 次
1. 連絡が取れない相続人を除外して遺産分割はできない
2.まずは戸籍と戸籍の附票で住所を調査する
3.住所は分かるが返事がない場合の対応
4. 行方不明の場合は不在者財産管理人などを検討する
5.まとめ
1.連絡が取れない相続人を除外して遺産分割はできない

遺言書がない場合、一般的には相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは、誰がどの財産を取得するのかを相続人同士で決める話し合いです。協議を成立させるには全員の合意が必要となるため、一人でも参加していなければ有効な遺産分割にはなりません。
連絡が取れない人の法定相続分が少ない場合も同じです。
「何年も会っていない」
「親の介護に関わっていない」
「海外に住んでいる」
「返事をしてくれない」
こうした事情だけで、その人を相続人から外すことはできません。
連絡が取れない人を除いて遺産分割協議書を作成しても、相続登記や預貯金の解約を進められない可能性があります。後から本人が現れれば、遺産分割のやり直しや損害賠償をめぐる問題に発展するおそれもあります。
まずは戸籍を集めて相続人を正確に確定し、なぜ連絡が取れないのかを確認することが大切です。
2.まずは戸籍と戸籍の附票で住所を調査する
連絡先が分からない場合は、相続人の戸籍や戸籍の附票を取得し、現在の住所を確認します。
戸籍の附票には、その戸籍が作られてからの住所の履歴が記録されています。
相続手続きに必要な範囲であれば、他の相続人や委任を受けた司法書士が取得できる場合があります。
住所が判明したら、まずは手紙を送り、連絡を試みましょう。
最初から遺産分割協議書への署名や実印の押印を求めると、相手が警戒することがあります。最初の手紙では、次の内容を分かりやすく伝えることが大切です。
- 誰の相続が発生したのか
- 相手が法定相続人となっていること
- どのような相続財産があるのか
- 現在どの手続きを進めようとしているのか
- いつまでに返事がほしいのか
- 問い合わせ先はどこか
相続財産や分配案を知らせず、署名や押印だけを求めることは避けた方がよいでしょう。相手にも財産の内容を確認し、自分の意見を伝える権利があります。
普通郵便で返事がない場合は、書留や内容証明郵便を使う方法もあります。
郵便が届いているのか。本人が受け取っているのか。すでに転居しているのか。
こうした状況を一つずつ確認し、次の対応を検討します。
3.住所は分かるが返事がない場合の対応

住所が判明し、手紙も届いているのに返事がないことがあります。
この場合、必ずしも行方不明とは限りません。相続手続きに関わりたくない場合や、提案された遺産の分け方に納得していないことも考えられます。
相続人に対し、遺産分割協議への参加を強制的に放棄させることはできません。
また、以前に「何も相続しなくてよい」と話していたとしても、口頭での発言だけでは手続きを完了できないことがあります。
返事がない場合は、まずその理由を考えてみましょう。
- 相続財産の内容が分からない
- 提案された分け方に納得していない
- 他の相続人と直接話したくない
- 送られてきた書類を理解できない
- 借金がないか不安を感じている
- 仕事や体調の事情で対応できない
家族間で直接連絡すると感情的な対立が起きそうな場合は、司法書士などの専門家を通して連絡する方法もあります。
それでも話し合いが進まなければ、家庭裁判所への遺産分割調停の申立てを検討します。
遺産分割調停では、調停委員が相続人それぞれの話を聞き、合意に向けて調整します。相手が出席しない場合や話し合いがまとまらない場合は、遺産分割審判へ移行することもあります。
単に返事がないからといって、すぐに不在者財産管理人を選任するわけではありません。
住所や所在が分かる人については、まず連絡方法を見直し、必要に応じて遺産分割調停による解決を目指します。
4.行方不明の場合は不在者財産管理人などを検討する
戸籍の附票に記載された住所を訪ねても住んでいない。親族や以前の勤務先などを調べても所在が分からない。
このような場合は、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。
不在者財産管理人とは、行方不明の相続人に代わって財産を管理する人です。
家庭裁判所が弁護士や司法書士などを選任することがあります。
選任された管理人は、家庭裁判所の許可を受けたうえで遺産分割協議へ参加できます。
ただし、不在者財産管理人は行方不明者の利益を守る立場です。そのため、原則として不在者の法定相続分を確保した遺産分割が求められます。
他の相続人の都合だけで、不在者の取得分をゼロにすることは難しいでしょう。
申立てでは、主に次のような資料が必要となります。
- 不在者の戸籍や戸籍の附票
- 所在を調査した経緯が分かる資料
- 相続関係を証明する戸籍
- 遺産の内容が分かる資料
- 遺産分割協議案
- 財産管理に必要な費用の予納
不在者財産管理人が遺産分割協議への参加や不動産の売却を行う場合は、家庭裁判所による権限外行為許可も必要です。
7年以上生死が分からない場合
長期間にわたり生死が分からない場合は、失踪宣告を検討することもあります。
普通失踪では、その人の生死が7年間明らかでないことが要件です。
失踪宣告が確定すると、法律上は死亡したものとみなされます。その結果、失踪した人の相続人が新たに遺産分割へ参加することになります。
ただし、失踪宣告は相続手続きを進めるためだけに形式的に利用する制度ではありません。本人の身分関係や財産関係へ大きな影響を与えるため、慎重な判断が求められます。
海外に住んでいる場合
海外に住んでいるだけで不在者になるわけではありません。
住所や連絡先が分かっていれば、海外にいる相続人も遺産分割協議へ参加できます。
ただし、日本の印鑑証明書や住民票に代えて、署名証明書や在留証明書などが必要になることがあります。必要書類や認証方法は国によって異なるため、早めに準備を始めましょう。
5.まとめ
相続人の中に連絡が取れない人がいても、状況に合った方法を選ぶことで相続手続きを進められる可能性があります。
ただし、その人を除外し、残りの相続人だけで遺産分割協議を成立させることはできません。
最初に行うのは、戸籍と戸籍の附票による相続人の住所調査です。
住所が分かるのに返事がない場合は、手紙の内容や遺産分割案を見直します。専門家を通じた連絡や遺産分割調停が有効な場合もあります。
調査をしても所在が分からなければ、不在者財産管理人の選任を検討します。長期間にわたり生死が分からない場合は、失踪宣告が選択肢となることもあります。
大切なのは「連絡が取れないから相続手続きはできない」と諦めないことです。
一方で、連絡が取れない相続人を無視して先へ進めることもできません。
司法書士法人あかりテラスでは、熊本での戸籍収集や相続人調査を承っています。連絡が取れない相続人への通知や遺産分割協議書の作成にも対応しています。
不在者財産管理人や失踪宣告など、家庭裁判所へ提出する書類についてもご相談いただけます。
相続人同士の関係や不動産の状況を確認し、今できることから一つずつ整理します。相続手続きが止まっている場合も、ご家族だけで抱え込まず早めにご相談ください。
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