【コラム】相続放棄をすれば借金も土地も引き継がなくてよい?注意点を司法書士が解説
2026/07/13
こんにちは。司法書士法人あかりテラスです。
家族が亡くなった後、借金や使う予定のない土地が見つかり「相続したくない」と考えることがあります。
そのようなときに検討するのが相続放棄です。
相続放棄が認められると、亡くなった方の借金を引き継がずに済みます。ただし、預貯金や土地、建物などの財産も受け取れなくなります。
また、手続きには原則3か月という期限があります。亡くなった方の預金を使ったり、財産を売ったりすると、相続放棄が難しくなることもあるため注意が必要です。
この記事では、相続放棄の仕組みや期限を、初めて手続きをする方にも分かりやすく解説します。空き家や土地がある場合の注意点や、自分が放棄した後に誰が相続人になるのかもご紹介します。
1.相続放棄とは?

相続放棄とは、亡くなった方の財産を一切引き継がないための手続きです。
家庭裁判所に申し立て、相続放棄が認められると、法律上は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、亡くなった方に次のような支払いが残っていても、原則として引き継ぐ必要はありません。
- 借金
- 未払いの家賃や税金
- クレジットカードの支払い
- 他人の借金の保証人としての責任
一方で、次のような財産も受け取れなくなります。
- 預貯金
- 土地や建物
- 株式や投資信託
- 自動車
- 貴金属などの価値がある家財
つまり「借金だけを断り、預貯金や実家はもらう」ということはできません。
相続放棄をすると、良い財産も負担になる財産も、まとめて引き継がないことになります。
あかりテラスでは、次のようなご相談を多くいただきます。
「借金があるようだが、いくらあるのか分からない」
「使う予定のない山林や農地を相続したくない」
「古い空き家を管理することができない」
「固定資産税だけがかかる土地を子どもに残したくない」
相続するかどうかを決めるときは、財産の金額だけを見るのではなく、その後の管理や費用まで考えることが大切です。
たとえば空き家を相続すれば、固定資産税だけでなく、草刈りや修繕、解体などの費用がかかる場合があります。
山林や農地も、売りたいときにすぐ売れるとは限りません。
借金が少なくても、管理が難しい不動産を引き継ぐことで、長く負担が続くことがあります。
2.相続放棄の期限は原則3カ月

相続放棄は原則として、自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に申し立てます。
多くの場合は、亡くなったことを知った日から3か月以内です。
申立先は、亡くなった方が最後に住んでいた地域を担当する家庭裁判所です。
この3か月は、相続するか、放棄するかを考えるための期間です。法律上は「熟慮期間」と呼ばれます。
ただし、財産を調べているだけでは期限は延びません。
「借金があるのか分からない」
「土地や建物が多く、調査に時間がかかる」
「相続人が多く、戸籍を集めるのに時間がかかる」
このような場合は、3か月が過ぎる前に家庭裁判所へ期限の延長を申し立てる方法があります。
すでに3か月を過ぎている場合でも、必ず相続放棄ができないとは限りません。
たとえば、亡くなった方に財産も借金もないと思っていたところ、後になって突然、債権者から請求書が届いたようなケースです。
この場合、借金の存在を知った時期や、それまで知らなかった理由を説明することで、相続放棄が認められる可能性があります。
ただし、期限を過ぎた後の相続放棄は、事情によって判断が分かれます。
「3か月を過ぎたから無理だろう」と諦めず、請求書や督促状が届いたら、できるだけ早く専門家へ相談しましょう。
3.相続放棄をする前に避けたいこと

相続放棄を考えている間は、亡くなった方の財産を勝手に使ったり売ったりしないことが大切です。
亡くなった方の財産を自分のものとして扱うと、「相続することを認めた」と判断される可能性があります。
この状態を法律上は「相続を承認した」といいます。
一度、相続を認めたと判断されると、その後に相続放棄を申し立てても認められないことがあります。
特に次のような行為は注意が必要です。
- 亡くなった方の預金を解約して生活費に使う
- 自動車や価値のある家財を売る
- 土地や建物を自分の名義に変更する
- 不動産の売買契約を結ぶ
- 遺産分割協議書に署名や押印をする
- 亡くなった方の借金を相続人として支払う
ただし、亡くなった方の財産に関わることを何もしてはいけないわけではありません。
たとえば、建物の窓が壊れて雨が入っている場合に応急処置をするなど、財産が傷まないようにするための対応は、直ちに相続を認めたことになるとは限りません。
葬儀費用の支払いについても、金額や支払いに使ったお金によって判断が変わります。
亡くなった方の預金を解約して高額な葬儀費用を支払った場合は、問題になる可能性があります。
そのため相続放棄を考えているときは、次のような行動を取る前に確認した方が安心です。
「預金を引き出してもよいか」
「家の中を片付けてもよいか」
「車を処分してもよいか」
「請求書を支払ってもよいか」
あかりテラスでは、相続放棄の書類作成だけでなく、手続き前に何をしてよいのかというご相談にも対応しています。
4.相続放棄後の空き家と次の
相続放棄が認められれば、亡くなった方の土地や建物の所有者にはなりません。
ただし、相続放棄をした直後から、空き家について何もしなくてよいとは限りません。
たとえば、亡くなった方と同居していた人が、そのまま家の鍵を持ち、建物を管理している場合です。
このように実際に財産を管理している人には、他の相続人や財産を管理する人へ引き渡すまで、建物が傷まないように保つ責任が残ることがあります。
法律上は「保存義務」と呼ばれます。
難しく聞こえますが、簡単にいえば「次に管理する人へ渡すまで、勝手に放置したり壊したりしないようにする責任」です。
また、自分が相続放棄をすると、別の親族が相続人になることがあります。
たとえば、亡くなった方の子どもが全員相続放棄をすると、次は亡くなった方の父母や祖父母が相続人になります。
父母や祖父母がすでに亡くなっている場合や、全員が相続放棄をした場合は、兄弟姉妹が相続人です。
兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子である甥や姪が相続人になることもあります。
相続の順番は、一般的に次のようになります。
- 子どもや孫
- 父母や祖父母
- 兄弟姉妹や甥姪
相続放棄をした人に、次の相続人へ必ず連絡しなければならないという決まりがあるわけではありません。
しかし、何も知らせなければ、親族が知らない間に借金や空き家の相続人になってしまうことがあります。
後のトラブルを避けるためにも、自分が相続放棄をしたことや、借金・不動産があることを伝えておくとよいでしょう。
相続人になる人が全員放棄した場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」を選んでもらうことがあります。
相続財産清算人とは、亡くなった方の財産を管理し、借金の支払いや財産の整理を行う人です。
申立ての際には、財産を管理するための費用として、まとまった金額をあらかじめ納めるよう求められることがあります。
相続放棄をすれば、空き家や土地の問題がすべて自動的に解決するわけではありません。
自分が放棄した後に誰が相続人になるのか。空き家を誰が管理するのか。
そこまで確認したうえで手続きを進めることが大切です。

5.まとめ
相続放棄とは、亡くなった方の財産を一切引き継がないための手続きです。
借金を引き継がずに済む一方で、預貯金や土地、建物なども受け取れなくなります。
申立期限は、自分が相続人になったことを知った日から原則3か月です。
また、亡くなった方の預金を使ったり、財産を売ったりすると、相続を認めたと判断される可能性があります。
相続放棄を考えている場合は、財産を動かす前に確認しましょう。
自分が放棄すると、父母や兄弟姉妹など、次の順位の親族が相続人になる場合があります。
空き家を実際に管理している場合は、放棄後も一定の責任が残る可能性があります。
相続放棄を検討するときは、次の点を確認しましょう。
- 借金や未払い金があるか
- 預貯金や不動産がどれくらいあるか
- 空き家や土地を今後管理できるか
- 山林や農地を引き継ぐ負担がないか
- 自分が放棄した後は誰が相続人になるか
- 手続き前に財産を使ったり処分したりしていないか
司法書士法人あかりテラスでは、熊本での相続放棄申述書の作成や戸籍収集をサポートしています。
相続放棄申述書とは、家庭裁判所へ相続放棄を申し立てるために提出する書類です。
借金だけでなく、空き家や山林、農地、使う予定のない土地も確認し「相続すると何を引き継ぐのか」を整理します。
そのうえで、相続する場合と放棄する場合の違いを分かりやすくご説明し、ご家族の状況に合った方法を一緒に考えます。
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