【コラム】生前贈与のメリット各種と活用にあたり押さえておきたい注意点
2026/09/17
相続と生前贈与、いずれの形でも財産を次の世代へと引き継ぐことができます。ただ、自動的に発生する相続と異なり生前贈与は前もって行動を起こさなくてはなりません。
その分得られるメリットも多くありますので、注意点と併せてご一読ください。
相続と生前贈与の共通点・相違点
相続は「人が亡くなった時点で法律上当然に発生する財産の移転」を意味します。
誰が何を受け取るかは、遺言書があればその内容に、なければ法定相続分をベースに相続人全員で行う遺産分割協議によって決まります。
また相続人の範囲は民法によって定められており、法定相続人以外の人に財産を渡すには遺言書が必要になります。
一方、生前贈与は「贈与者(渡す人)と受贈者(受け取る人)が合意することで成立する契約」です。
誰に何を、どのタイミングで渡すかを贈与者が自由に決めることができ、相続人以外の人も受け取ることができます。また、贈与契約は口頭でも成立しますが、後のトラブルを防ぐために書面(贈与契約書)を作成するのが一般的です。
生前贈与ならではのメリット
相続にはない生前贈与の利点は以下で紹介するように多岐にわたります。節税効果に注目されることが多いですが、「財産を渡す方法」としての自由度の高さや、家族間のトラブル予防といった観点からもメリットがあるといえるでしょう。
渡したい相手を自由に選べる
相続の場合、法定相続人以外の人への財産承継は遺言書がなければ実現しません。また、法定相続人がいる場合には遺留分による制約※もかかります。
※遺産分配に極端な偏りがあると、遺留分の権利を持つ相続人からの請求が発生し得る。ただし、生前贈与でもその内容や実行時期によっては制約が及ぶケースもある(後述)。
生前贈与であれば、長年介護を支えてくれた息子の配偶者、特別に支援したい孫や甥・姪、事業を一緒に育ててきたパートナーなど、相続人の枠にとらわれず本人の意向をそのまま形にした財産承継が可能となります。
必要なタイミングに合わせて渡せる
相続が発生するタイミングは誰も選べません。
一方の生前贈与なら、子どもの住宅購入や孫の進学、結婚など、受け取る側が資金を特に必要とする場面に合わせて財産を渡すことができます。受け取った財産がすぐに活用してもらうことができ、次世代の生活や経済活動に貢献できるというメリットが得られるでしょう。
また、贈与者本人が渡した財産の使い道を見届けられる点も、相続にはない大きな利点です。
遺産分割時のトラブルを回避できる
相続では、不動産や非上場株式など分割しにくい財産をめぐって相続人間で意見が対立するケースも少なくありません。
しかし生前贈与によって特定の財産を特定の人に渡しておけば、その財産は遺産分割協議の対象から外れます。誰が何を引き継ぐかを生前に整理しておくことで、相続発生後の手続きが円滑になり、家族関係を守ることにもつながるでしょう。
納税資金の負担を調整しながら渡せる
贈与税には年間110万円の基礎控除があり、1年間に受け取った贈与の合計がこの範囲内であれば贈与税はかかりません。
相続ではまとまった金額が承継され、相続税の負担が一気にのしかかってきます。しかし贈与なら渡す額も時期も当事者間で決められることから、納税資金の負担も調整できるのです。
その他贈与を活用した節税対策については、税理士に相談しながら取り組むことをおすすめします。
贈与者の意思を確実に実現できる
遺言書を残しても、相続発生後に内容の解釈や有効性をめぐってトラブルになることがあります。一方、生前贈与であれば、贈与者が意思能力を持ち、本人が関与した状態で手続きを完結させることができます。
「誰にどの財産を渡したか」を記録として残せますし、相続後の財産承継に比べて本人の意思を着実に実現させやすくなるでしょう。
メリットを活かすために注意すべきこと
生前贈与には多くのメリットがありますが、手続きや進め方を誤ると思わぬリスクが生じます。
そこでまず、「贈与した事実を証明できる記録を残すこと」に留意してください。
口頭の約束だけでは後から「贈与ではなかった」と主張されるリスクがあります。また、受贈者名義の口座を贈与者が管理している状態(名義預金)だと、税務上も贈与が成立していないと判断されかねません。そこで通帳・印鑑・カード等は受贈者が管理し、実態を伴った贈与とすることが大切です。
また、「生前贈与でも遺留分の問題が生じる場合がある」ことも留意してください。
①相続開始前1年以内に行われた相続人以外への贈与、②相続開始前10年以内に行われた相続人への贈与(特別受益にあたるもの)は、遺留分算定の対象となります。相続の直前に多額の財産を贈与すると、ほかの相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあるということです。
そのため生前贈与を計画する際は、ほかの相続人への影響についても考慮することが欠かせません。大きな紛争に発展しないよう、司法書士や税理士など専門家とも連携しながら取り組みましょう。
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