【コラム】家族信託を始めるタイミングはいつがいい?いつから検討すべきか
2026/06/22
家族信託は認知症対策としても相続対策としても効果的な手法ですが、「まだ元気だし、今すぐでなくても」と始める機会を後回しにしがちです。しかし、いざ着手しようとしたときには手遅れ、という事態も考えられます。
家族信託を始めるタイミングや検討時期については「早めが良い」ということを覚えておきましょう。
家族信託を始めるための条件
家族信託の契約は、財産を持つ本人(委託者)が内容を理解し、意思表示できる状態でなければ締結できません。
これを法的には「意思能力」と呼びます。認知症が進んで判断能力が著しく低下すると、意思能力がないと評価される可能性がありますので、そうすると新たに契約を結ぶことが難しくなってしまいます。
つまり「必要になってから始める」では遅いことがあるのです。老後の財産管理や不動産の処分、施設費用の支出などに備えるためにも、判断能力がある段階で準備を整えておかなくてはなりません。
始めるタイミングの目安
「いつ始めるべきか」に対する明確な正解はありません。たとえば年齢は指標の一つとして考えることもできますが、あくまで考慮要素の一つにすぎません。その他本人の状態や生活の変化をもとに判断することも大切です。
物忘れが増えたタイミングは要注意
認知症の正式な診断が出てから動き始めると、意思能力の有無をめぐってトラブルになる可能性があります。そのため「以前より物忘れが増えた気がする」と感じ始めたらすぐ、できればその前段階で手続きに着手することが推奨されます。
ただ、認知症と診断されても手遅れとは限りません。家族信託契約に対する意思能力があれば有効に契約を締結することはできますので、まずは専門家にご相談ください。
70歳代に差し掛かった
70代に入ってくると、先のことを整理しておこうという気持ちにもなりやすいですし、まだ意思能力にも問題ないケースが多いです。また、子ども世代が40〜50代で仕事も生活も比較的安定しており、財産管理を担う受託者としての役割を引き受けやすい状況にあることも多いです。
こうした環境が整ってきたタイミングで一度家族信託の必要性、今後の財産のこと、相続のことを考えてみるのも良いでしょう。
その他家族信託を考えるきっかけ
次のような出来事や変化が起きたときも、対策の一つとして家族信託を考えてみましょう。
・所有する不動産の管理・売却を考えるようになった
・施設への入居を検討し始めた、または実際に入居した
・配偶者に先立たれ、一人での生活になった
・相続を意識して財産の整理を考え始めた など
具体的に何か問題・トラブルが起きてから対処しようとする方が多いですが、大きな揉め事に発展させず円滑に資産承継を進めるためにも「生活の中で気になることが出てきた」という段階で準備を始めましょう。
契約してもすぐに財産管理の主導権は移らない
「家族信託を始めると、財産が子どものものになってしまう?」と不安を抱く方もいます。
確かに家族信託の運用が開始されると形式上は所有権が受託者へと移転します。しかし契約の設計次第では「本人が元気な間は引き続き自分で管理し、判断能力が低下した場合に受託者が引き継ぐ」という形にすることも可能です。
また、意思能力が保たれている間は契約内容の変更や見直しも可能です。
家族信託は「今すぐ財産を渡す手続き」ではなく、いざというときのための備えとして機能する仕組みと覚えておくと良いでしょう。
先延ばしにすると何が起こるか
家族信託を整えていた場合と先延ばしにした場合では、今後必要になる対応が大きく変わってきます。
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場面 |
先延ばしにした場合のリスク |
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認知症になったとき |
成年後見制度の利用が必要になることが多く、財産の使い方に一定の制約が生じることがある |
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不動産の売却・管理をしたいとき |
本人の意思確認ができず、必要な手続きが進められなくなったり、適切なタイミングでの処分ができなかったりする |
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緊急の資金需要が発生したとき |
施設費用や医療費のために必要な口座の管理が難しくなったり、時間がかかったりする |
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相続が発生したとき |
資産運用に経験や知識を要する財産がある場合、突然の相続に対処できず適切な運用ができなかったり資産価値を落としてしまったりするおそれがある |
本人の財産と権利を守るための重要な制度として成年後見制度もありますが、こちらは家庭裁判所が関与する分、財産の使い方に制約が伴うことがあります。
一方、家族信託はあらかじめ定めた方針に沿って柔軟に対応できます。財産の種別に応じて使い分けることも可能ですが、事後対応可能な成年後見と違い家族信託は事前の準備が欠かせません。
※成年後見にも2種類あり、事後対応可能な「法定後見」のほか、家族信託同様前もって契約を交わしておく必要のある「任意後見」もある。
検討段階から専門家を有効活用しよう
「もう少し状況が固まってから相談しよう」と考える方も少なくありませんが、相談の段階で詳細にまで方針を固めておく必要はありません。
むしろ「家族信託がどんなものなのか知りたい」「家族信託以外も視野に入れながら将来のことを考えていきたい」といった段階から専門家を利用して対策を練っていくことをおすすめします。
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